研究テーマ設定の背景
大学時代、動物行動学(人間行動学)に接し、人のコミュニケーション、特に ノンバーバルのコミュニケ―ションに興味を持ったことがそもそものきっか けです。特にスポーツではガッツポーズやハイタッチなどの日常ではあまり 見られない行動が多く、そういった行動が私たち人間にとってどのような意 味を持っているのかを知りたい、と思ったのが設定のきっかけです。当初は動 物行動学的な視点からスポーツ行動を見ていたのですが、心理学にも似たよ うな領域があることから次第に心理学的な要素が加わり、また教育学的な要 素も加わって現在の形になっています。
研究手法
体育授業を研究の場とし、教員や周りの人とのかかわりの中で個人のコ ミュニケーション行動がどのように変化するのかを調べることを目的として います。具体的には競技の中で顔見知りでは無い人とペアを組ませたり、声 を出すよう促したりして、それによる学生のコミュニケーションの変化を見 ます。データは主に質問紙によって集めており、それらについて個人の変化が 見られるような解析を行っていきます。
調査対象や調査地についての解説
前述の通り体育授業を調査地に、それを受講している学生を調査対象にし ています。また、調査対象については、個人によってコミュニケーションの促 進の具合、コミュニケーションスキルの向上の具合が異なるために、集団で はなく個人の違いを分析しています。
分析のためのソフトウェアやツール
統計解析のためにExcelやSPSSを使用しています
研究についてのこだわり
実際の場で何が起きているか、個人の中でどのような ことが起きているかを「知る」ことを研究の目的としてい ます。汎用性のある「理論」を構築するのではなく、スポー ツの現場で何が起きているのかを知ることが出来る研究 をしています。前述した動物行動学的な視点が研究の ベースにあります。
研究生活で最もわくわくしたこと、逆に最も落ち込んだこと
博士論文に係る研究を行っていた際に、データ収集に おいて誰もしたことの無いような方法をとったために、本当に結果が出るのかと不安になると同時にわくわくしま した。
研究生活で出会った印象的な人物やエピソード
イギリスに留学した際に、イギリススポーツのあり方というものが強く印象に残っています。イギリスではクリ ケット、スヌーカー、ローンボウルズ、ゴルフ、テニス、モーターレーシング等が人気ですが、このほとんどは「我慢強 さ」が勝敗に大きく関わります。長い試合の中でじわじわ勝利に近付きながらも、一回のミスで負けてしまう、そう いった「報われないかもしれない忍耐」が必要であるという特徴があり、印象的でした。
大学院生へのメッセージ
自主性を持つ、自分で開拓していく、自分で決断するという自立性・自律性を持ってください。教員に、(必要以上に は)頼らないように。
大学院生の時何をしていたか
乏しい記憶によれば、研究一筋でした。これまでで最も研究に集中できていた時期だったと思います。また、イギリ スにも1年半の期間留学し、そこで得られた経験は現在も大いに役に立っていると思います。
学際連携についての思い
いろいろな分野の人と交流することで、新しい発想や、新しい領域が出来上がっていくと思います。自分自身いろ いろな分野を学んできたのですが、他分野への理解を示せられないと、他分野連携は上手くかみ合わないだろうと 感じています。
今後の研究・実践活動について
数年前よりインドネシアの研究者との共同研究を行っており、それを更に発展させる予定です。インドネシアは日 本と災害構造(地震、津波、洪水、火山)が似ており、災害下での心のケアにどうスポーツが使えるかなど、よりよいス ポーツ活動を探索していきたいと考えています。
おすすめの文献
○『大学は何をするところか』,日高 敏隆,平凡社,1993


活動概要
研究活動:1)スポーツパフォーマンスを向上させる心理的要因に関する研究(心理的競技能力、ストレス対処能力、作戦立案能力などがスポーツパフォーマンスとどのように関係しているのか)、2)体育・スポーツ場面における社会的スキル・コミュニケーションスキルなどに関する社会心理学的研究(体育・スポーツ場面において、社会的スキルやコミュニケーションスキルはどのように用いられ、また発達しているのか)、3)体育・スポーツにおけるノンバーバル行動の研究(体育・スポーツにおいてノンバーバル行動が持つ意味や意義)

教育活動:基幹教育の健康・スポーツ科目を担当,大学院人間環境学府の健康・スポーツ科学関連科目を担当
社会活動:平成8年度より14年度まで、鹿児島県において、スクールカウンセラーを担当